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「夏と冬の奏鳴曲」についてのメモ

夏と冬の奏鳴曲(ソナタ)
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ)

以下は
根本的なネタバレ、の上に覚え書きっす。注意です。






要素1
「弟切草」に登場した、ヤケドを負い、自分の世界に閉じこもったナオミ。

 
 作中では明示されていないが、文脈から、二人の桐璃は双子であったことはほぼ間違いない。
 「うゆーさん」と呼ぶ桐璃と「うゆうさん」と呼ぶ桐璃。
 この呼び分けの違いは途中から気が付いていたが、流して読んでいました。
 まさか二人いて、入れ替わり続けていたとは。

 最後に烏有と一緒に脱出した桐璃は両眼が揃っていたので「うゆうさん」と呼んでいた方になる。主に裏方役を担っていた方ですね。

 ただ、烏有の意識としては「うゆーさん」と呼ぶ桐璃を桐璃として認識していたわけで、
 その桐璃は死んでしまった。
 そして、傍らにはもう一人の桐璃が残された。

 その図式が「弟切草」の額に火傷を負ったナオミを思い出した。
 
 「弟切草」はそれを一面的な悲劇として演出していた。しかし僕はそれを、一つのハッピーエンドの始まりとして捉えていた。

 本来、そっくりで見分けのつかない双子。だが、顔に傷を負うことにより、あきらかに判別が付くようになる。そのギャップが演出に生かされるのだ。

 ナオミは常に主人公に対し、殺意を持った恐怖の存在として描かれる。
 だから、主人公の恋人、奈美とナオミが「似ている」という事実はいつのまにか意識から抜け落ちる。
 そして、クライマックス、焼け落ちる屋敷から脱出する主人公。
 いったん離ればなれにされた奈美をすんでの所で救い出し、一緒に屋敷から脱出する主人公。
 安堵の溜息をつく主人公。
 だが、その時、屋敷の中から小さな叫び声が聞こえる。
 奈美の声だ。

 そして、振り返った主人公の目の前で前髪を掻き上げる女。
 その額には……。

というところで終幕。

 勿論、その額には火傷の跡があったわけで。

 殺人者であった、ナオミが最後に奈美のフリをしたんですよね。
 
 傷を除けば外見上見分けがつかない、ナオミと奈美。
 ということは傷を隠して、言動を真似れば、区別がつかない。
 
 だからこそ、取り違いも起こりうる。
 ハッピーエンドから一気に突き落とすこの墜落感が圧巻でした。

 それに比して、
「夏と冬」の場合は、もっとストレートに、「不可逆な傷」というシチュエーションを生かしていると言える。

 桐璃が左眼を失った後、
 両眼の揃った桐璃が出現する。
 一瞬何が起こったのかわからない。パニックになる。
 だが、論理的に解釈すれば、もう一人別の桐璃が存在した、ということ。
 他に解はない。

 その時点で、初めて、いわゆる裏の桐璃の存在が認識されることとなる。
 幾つもの驚愕をもたらしてくれた「夏と冬」だが、その中でも最大級のサプライズである。
 そして、その桐璃は、殺意を持った敵でもなんでもなく、表の桐璃とほぼ同じ人格を有している、ということが会話の中で明らかにされる。

 そして烏有の決意、桐璃を守るという意志の基盤が根底から覆されてしまうのだ。

 二人が、同じ外見、同じ価値観、同じ性格を有していたとしたら、表の桐璃をあえて選ぶ理由がどこにあるのだろうか。

 頭がおかしくなりそうな問いを烏有、そして読者はぶつけられることとなるのだ。
 
 片方の桐璃が死ぬ(おそらく崩落に巻き込まれて事故死)ことにより、烏有、そして読者は結果的にその致命的な葛藤状態から脱出を果たすことになる。

 ほとんど放心状態の中、読者は、傍らの少女に両眼が揃っていることに気付かされる。

 死んだのは表の桐璃だった。
 しかし、裏の桐璃も、烏有が愛した桐璃に間違いはなかった。
 だから、烏有は根本的な喪失に臨んでさえ、自分を保つことが出来たのだと思う。
 

 「夏と冬」については、「弟切草」と違い、演出自体が一概に悲劇ではなく、一つの運命の始まりをも示唆していた。
 それが受け入れられない人も多いだろう。
 だってバッドエンドだもの。

 でも、かつて「弟切草」のナオミとのその後に思いを馳せた私としては、
 これはきっちりとしたエンディングの一形態だと捉えることが出来ました。

 満足です。
 


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